相続人不存在による相続財産清算人 ~その1~
成年後見人に就いて6年、本人死亡により後見終了となりました。
葬儀や死亡による各届出等を済ませ、施設費、医療費等、債務の弁済を終えました。
その後、裁判所に後見終了報告を行い、報酬を受領して・・・・
通常は相続財産を相続人に引渡して後見業務が終了します。
ところが、本人には相続人が存せず、引渡すべき相続人がいません。
そこで、相続財産清算人選任の申立を検討します。
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**令和5年4月1日改正民法施行により、従来の相続財産管理人が相続財産清算人へと変わりました。**
改正民法
(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条 第九百五十二条第二項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
通常は、被相続人が亡くなったのち、その相続財産の管理は相続人や受遺者によって行われます。しかし、相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合には、相続財産を適切に管理する人がいなくなります。このような場合に、相続財産清算人が選任され、選任された相続財産清算人が相続財産を管理して清算することになります。そして、最終的に残った財産を国庫に帰属させます。
相続財産清算人選任申立をできるのは、利害関係人と検察官です。利害関係人には、相続債権者、特別縁故者、特定受遺者などが該当します。また、今回のように成年後見人等であった者も申立ができるとされています。
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そこで、成年後見人であった者として、相続財産清算人選任申立を行いました。
実は、”相続財産管理人”として申立ててしまいました。案の定、裁判所から 「令和5年4月1日から相続人不存在の「相続財産清算人」へ名称が変更され、手続きも変更になっていますので、先生の方でもご確認を・・・」との指摘を受けました。申立書のコピペ元のタイトルが「相続財産管理人選任」となっていたためで注意不足でした。
これまで、相続人が不存在の場合には、①管理人の選任公告(公告期間2カ月)、②債権者等からの請求申出公告(公告期間2カ月)、③相続人捜索公告(公告期間6カ月以上)が必要であり、最低10カ月の公告期間が必要でした(実際には、公告の間の期間等もあるため、より長期間が必要)。
令和3年民法・不動産登記法改正(令和5年4月1日施行)では、この清算手続きの合理化が図られ、従前の①選任公告と③相続人捜索公告を統合して一つの公告で行うこととなって、その公告期間を6カ月以上となりました。
そして、この公告と並行して、相続財産清算人は、上記②債権者等からの請求申出をすべき旨の公告を行い、この公告期間は、2カ月以上で、かつ、上記①③の公告期間内に満了しなければならない、とされてました。
以上の改正によって、権利関係の確定に最低必要な公告期間は、6カ月に短縮されました。
******審判後は次回以降で************