後見申立て ~診断書で振り出しの危機~

先日後見申立てのご依頼がありました。

関係者間で保佐相当であろうとの判断で、本人申立による保佐開始申立書の作成及び保佐人就任の案件でした。

関係者会議に出席し、事情を把握することになりました。当然のこと、申立時の本人の生活環境や所有する財産等によって、難易度が異なります。

今回の案件は、比較的スムーズに事を運ぶことができるのではないか、経験乏しいながら想像します。

 ・本人が取引している金融機関も大方判明していること。

 ・私有する不動産も把握できていること。

 ・親族関係も把握できていること。(同意も得られている)

 ・各種保険関係の資料も揃っていること。

など。

おまけに、関係者の計らいで時間がかかりそうな診断書も手配されているようで、皆さんのご期待に沿えるよう、ぬかりなく進め、審判を得られるようにしていかなくてはいけません。

・・・・ここからが、悪夢の始まりとなったのです。・・・・

申立から2週間後、家裁の調査官による本人面談が設定されました。小職も候補者として同席します。

本人は、軽度の認知症でありましたので、調査官の質問にも難なく受け答えしていきます。

記憶も定かで、” いい感じ! いい感じ! ”  ” 順調! 順調! ”   

と思ったのもつかの間、思わぬ展開が待っていました。

本人が、調査官に質問をし始めました。

「あなたの名前は?」

  調査官: ○○といいます。

   本人は、”うん、うん、と頷き、筆記します・・。 

「下の名前は?」

  調査官: ○○です。

「珍しい名前ねぇ! どんな字を書きなさる?」

  調査官: ・・・・・・。

「何処から来なさったん?」

  調査官: ・・・・・・。

本人の性格は何度かお会いしていてわかっていたゆえ、さほどの驚きはありませんでしたが、調査官と苦笑するしかありませんでした。

本人は機嫌が良かったのでしょう。ご機嫌を損なわないように、他の話題に振って何とか面談終了となりました。

帰り際、調査官から診断書を再提出するよう、指示がありました。

保佐相当と結論付ける、判断能力に関する所見が欠けていることが理由のようでした。

施設職員を介して、作成した医師に再度診断書の作成をお願いしましたが、快い返事を頂けません。

” あなたの診断書は要点を欠いていたため、書き直してよ・・・。” 医師としてのプライドが許せなかったのでしょうか。

仕方がありません。施設に関わる、他の医師に作成をお願いしました。

” 判断能力についての所見を・・ ” と念を押して!!

数日後、受け取った診断書に唖然となってしまった!!  前回の診断書の内容にそっくりではないか!!!

悩んでも仕方ありません。その足で裁判所に向かうことに。

担当書記官・調査官に、恐る恐る診断書を差し出したところ、

予想通り、案の定、差戻しとなりました。

あれだけ念を押してお願いしたのに! 抜かりがありました!

もう失敗は許されません。

書記官・調査官と相談の上、専門家の医師に依頼することになりました。

調査官からは、提出期日を切られ、鑑定になる可能性も考えてください、と。 

要するに、次はない!と示唆されたことと同じ。

類型が異なれば、申立の趣旨の変更を出してもらうことになるかもしれません、とも。

ツテを頼って、まずは電話でアポを取り、同時に書面で丁重に、また、迅速に作成してもらうよう、願い出ました。

待つこと1週間、連絡をもらってすぐに受取に行きました。前回、前々回の診断書とは違った切り口で記載されていました。ただ、お医者さん特有の字体で!!

読めません!!

解読不能!!

猶予はありません。裁判所に急行しました。午後5時までに着くか、微妙でしたが、・・・。

間に合いました! 

閉庁間際、無事受け取ってもらえました。

鑑定開始の通知を受けることもなく、数日後には審判書を受領できました。

まさに診断書待ちの状態だったのでしょう。

診断書の内容まで気を遣うべきなのですね。

勉強させていただきました。