この事件は、高齢で認知症を患った母親に相続承継債務の通知が届いたところから始まります。

 

子 A男の死亡により相続が開始します。

A男には子がいないか、子が相続放棄を申述していて、第1順位の相続人がいない場合には(配偶者はいない)、次順位相続人 直系尊属である母親甲さんが相続人となるわけで。

 

何の前振りもなく唐突に、相続債権者から甲さんに対し、” 亡A男の債務を承継されましたので弁済してください ” ときたわけです。

いざ、相続放棄をしようにも甲さんは高齢で認知症を患い、施設に入所しているために自分では手続きできません。誰かが甲さんに代わり相続放棄の手続きをしなくてはなりません。

 

そこで、甲さんの後見開始を申立てることになりました。

子 B子さんから、裁判所提出書類作成を受任し、子 B子さんを申立人兼後見人候補者とする後見開始申立書作成の準備にかかります。

取得に時間のかかる ” 登記されていないことの証明書 ” をまず請求します。依頼者には収支に関する資料を用意してもらい、その他公的書類は当職が取得します。

また、診断書も時間がかかることが多く、通常は診断書を待って申立てとなるところ、今回は手際よく診断書を用意してもらうことができました。

 

今回は、このあとに相続放棄申述の手続きが待っています。

” なるべく早い審判を願います ” とする上申書をしのばせて申立てました。

 

2週間後に候補者面談日が設定されました。

依頼者としても初めてのことであり、不安でもあるでしょうから、当職も当日面談にお立会いさせていただきました。

何度もお会いした調査官で、滞りなく終了! 一安心です。

 

 

1週間後、審判書を受け取ったとの連絡をいただき、確定を待って次の手続きに移ります。

 

当事件は、子 A男の相続に関し、後見人がする被後見人の相続放棄であるわけで、当然に利益相反が問題となります。

後見人は子(A男の兄弟姉妹)であり、被後見人は母親です。

相続の順位としては、母親 甲さんが先順位であり、甲さんの相続放棄によって次順位の兄弟姉妹 B子さんが相続人になります。

 

そこで、昭和53年2月24日の最高裁の判例で判断された

共同相続人の一人が他の共同相続人の全部または一部を後見している場合において、後見人が被相続人全員を代理している相続の放棄は、後見人みずからが相続の放棄をしたのちにされたか、または、これと同時になされたときは、民法第860条によって準用される同法826条にいう利益相反にはあたらない」

が、・・・

共同相続人ではないし。

次順位相続人が先に相続放棄できるわけがないし。

同順位ではないので、同時にできるわけがないし。

 

ん~。利益相反になるか?

士業サイトで情報を収集すると、

ある司法書士のサイトでは、” 裁判所から利益相反に該当すると回答があり、特別代理人を選任した ”

とある弁護士サイトでは、” 利益相反に該当しないように思うが、裁判所に確認されたし ”

などなど。

 

調査官を通じて、管轄家庭裁判所に特別代理人選任の要否を訪ねると、特別代理人を選任する必要があるとの回答でした。

 

利益相反行為となるかどうかは、行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであり、後見人の動機や意図をもって判定すべきではないと考えられています(最三小判昭和42年4月18日)。

しかしながら、実質的には、母親 甲さんが相続を放棄することによってB子さんが相続人の地位に就くことになる以上、裁判所としての見解は、利益が相反すると判断され、特別代理人を選任しなければならないということでした。

 

2週間の経過を待って、被後見人 甲さんの特別代理人選任の申立を行いました。

申立人の了承を得て、当職を特別代理人候補者として。